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漆のチカラ

The power of
urushi

トラディショナル
インダストリアル

会津─────
東京から北へ3 時間

周囲を山々に囲まれ、豊富な水資源と
肥沃な大地に恵まれたこの土地には
数千年の昔から、人々が自然に集い
集落を形成し、農業や生活の道具を作り
さまざまな形で文化を発展させてきました

江戸時代末期には
今とほぼ変わらぬ数の人々が生活する
東北最大級の文化・経済都市でもありました

現在は、1 7 の市町村から成る会津
3 2 万の人々が
伝統・文化に裏付けられた会津のチカラを
礎に未来に残す新しいカタチを探し続けています

地域のチカラ

黒・本朱内金地 紅茶椀 桜

黒・本朱内金地 紅茶椀 桜

四百年の時を越えて生き抜いた伝統の技の上に
新しい漆のチカラは今なお、伝承と革新を続けています。

漆のチカラ

 漆は、漆の樹から採取される樹液で、天然塗料の 中で最も優れた特性を持つと言われています。日本人 にとって漆は、その環境と生活の中で、大切に育まれ てきた特有の文化です。
 うるしの語源は、「うるわしい・うるおす」という言葉 が由来といわれ、深みのある色調、光沢は見る人を 魅了し続けてきました。

 日本は世界最古の漆が発見されている国です。福 井県で12600年前、北海道で9000年前の漆が見つ かっています。漆は自生が難しく、人々は漆を植栽し、 樹液や木材の性質を理解して機能素材として暮らし に取り入れてきました。

 会津地域でも三島町荒屋敷遺跡より、約2500年 前の漆塗りの糸玉や装飾品と言った生活の道具が 出土し、市内中心部の大塚山古墳からは漆塗りの武 具なども発掘されています。
 漆は抗菌性の高さから、生活の道具に使われてき たのは勿論、防腐力の強さから文化遺産の修復や保 存にも大きな役割を担っています。
 漆の塗膜は、その強靭さから数千年以上の耐久 性を持つと言われていますが、太陽光などの紫外線 には弱く、屋外では塗膜が分解され風化し、自然に 還って行く環境に優しい素材です。
 まさに、自然との調和を重んじた日本文化の象徴と して、漆は世界に誇れる宝物と言えるでしょう。

たくみ

のチカラ

 Process

板物の工程

素材 /  木地 /  漆塗 /  加飾

丸物の工程

素材 /  木地 /  漆塗 /  加飾

樹脂製品の工程

素材 /  素地成形 /  吹付塗装 /  加飾

技のチカラ

消金地 / 金虫喰塗り / 朱磨き / 会津絵

消金地

消金地

消金粉の中でも、とりわけ細かな微粉末粉を 使う加飾技法。真綿若しくは、鹿皮を使い、漆 面を金色に蒔付けしその後、摺漆を数回行う ことで金地面の補強がなされると同時に、深 み感が感じられる独特な仕上がりとなる加飾 技法。

消金地1 消金地2
金虫喰塗り

金虫喰塗り

黒漆を塗り大麦または、籾殻もみがらを全面に蒔付け し乾燥させた後、殻を取り除くことで凹凸模様 が作られる。その後、金・銀箔もしくは、消金粉 などを蒔き、透漆を塗り込み乾燥した後、砥石 や研ぎ炭で研磨し、磨き工程を経て完成とす る塗り技法。

金虫喰塗り1 金虫喰塗り2

Traditional skills of Aizu

Keshikinji / Kinmushikui-nuri / Shumigaki / AIZU-E

会津絵

会津絵

松竹梅漆絵とも称される。赤漆・青漆・黄漆・ うるみ漆・弁柄漆などの色漆の他、金箔や消 金粉を使い、松竹梅・破魔矢・糸車・檜垣など をモチーフに構成された加飾。

会津絵1 会津絵2
朱磨き

朱磨き

漆面に弁柄漆・黄漆などを使い、模様を描き、 本朱などの粉を蒔付けした後、摺漆を行い、石 砥粉などを使って、磨き仕上げとする朱蒔き絵。

朱磨き1 朱磨き2

花塗り

漆に乾性油を加えた有油漆ゆうゆうるしを使った塗り。光沢性と伸しが向上するとと もに、刷毛の塗りむらを極度に嫌う高度な塗り立て技法。

花塗り

沈金

漆塗り面に沈金刀と称される刃物を使い模様を彫る。 その後、彫り面に摺漆を行い金・銀箔、消金、色粉など を蒔付けた後、模様以外に付着した箔、粉を除去し完 成とする加飾技法。

沈金

網絵

漆塗り面に緻密な網の模様を筆描きした後、金・銀 粉の他、色粉を蒔付けて完成とする。他に、朱漆描 きや平粉・丸粉を蒔付けて、磨き仕上げも行える加 飾技法。

網絵

錦絵

明治になり会津で発明された加飾技法。漆面に色漆や朱磨き、消金粉 などを使い、雲形文や牡丹・鳳凰・宝尽くしなどの縁起物をモチーフに 構成された加飾。

錦絵

歴史のチカラ

会津の地に本格的な漆工芸が根付いたのは、1590年に領 主となった蒲生氏郷が、産業として奨励したことに起因しま す。氏郷公は前領地であった日野(滋賀県)から木地師や塗 師を呼び寄せて、先進技術を伝承させました。江戸時代には 会津藩の祖・保科正之が漆の木の保護育成に努め、歴代 藩主や家老・田中玄宰が技術革新に取り組んだ結果、中 国・オランダなどへの輸出も進み、隆盛を迎えました。
戊辰戦争において壊滅的な打撃を受けた会津漆器も、明治 から昭和を経て、経済産業大臣指定の伝統的工芸品として 認定され、現在では、40名近い伝統工芸士が技術を継承す る日本有数の工芸産地として、その名を轟かせています。

歴史のチカラ1 歴史のチカラ2

再生のチカラ

漆は塗膜の美しさと共に、接着力の強さも検証されています。 文化財の修復に漆が用いられるのは、天然塗料でありなが ら調和性と堅牢性の高さが大きな理由です。古来より、日本 には「金継ぎ」という伝統技法があります。金継ぎとは、破損し た器を漆で継ぎ、金や銀で装飾して直すという日本固有の再 生文化です。室町時代に茶道の世界で始まったといわれて います。注目すべき点は、壊れた器を単に修復するだけでな く、壊れる前よりも美しいものに昇華するという美意識のあり 様です。

再生のチカラ1 再生のチカラ2

継承のチカラ

会津漆器協同組合では、伝統工芸の技術を未来へ継承し て行くため、後継者の育成にも力を入れています。1971年か ら、市や県の支援を基に、業界と行政機関が一体となり「会 津漆器技術後継者養成協議会」を設立し、後継者の育成 事業を本格的に開始しました。2003年よりは「福島県認定会 津漆器技術後継者訓練校」として事業を継続し、組合が中 心となり育成を続けています。
訓練生は、塗専攻・蒔絵専攻に分かれ、密度の高いカリキュ ラムで2年間の研修を受けた後、更なる研鑚を積み、毎年数 名の若手達が、産地の未来を担う大切な人財として育って います。

継承のチカラ1 継承のチカラ2

未来のチカラ

400年を越える時を経て継承を続けてきた伝統の会津塗りは、 日々新しい製品づくりや、技術革新に挑戦し続けています。 現在会津では「漆の香るまちづくり」と題し、公共の建物や学 校などに、漆製品を増やしていく普及活動に力を注いでいま す。また、ホテルや一般の飲食店においても、漆器や塗り物に 触れて頂ける機会を増やし、地域の様々な場面で漆の質感 や温もりを感じて頂ける街づくりを目指しています。さらに、イン テリアやアクセサリー、建築部材や嗜好性の強い製品(自動 車の内装部分・時計・携帯カバー等)への漆塗装など、次世 代へ繋がる新しい風を吹かせています。

未来のチカラ1 未来のチカラ2

掲載写真と実際の商品との、色調の多少の違いはご了承ください。