協同組合を設立しようとする場合、「協同組合」と「会社」の相違について、明確に理解して頂くことが大切です。
わが国の企業の形態は、大きく分けて公企業と私企業に分けることができますが、私企業については、さらに個人企業と共同企業に分けることができます。共同企業には、法人格をもつ法人と法人格をもたない匿名組合、民法上の組合、権利能力のない社団などの非法人企業があります。
法人には、営利法人としての会社、公益法人としての社団法人、財団法人、特定非営利活動法人(NPO法人)、そして、営利法人と公益法人の中間に位置づけられる中間法人としての協同組合等があります。
協同組合と会社(代表的なものとして「株式会社」)は、ともに法人であり管理面等で多くの類似点がありますが、以下のように、基本的な理念や性格の上で異なる点が多くあります。
第1に、株式会社は資本中心の組織であるのに対し、組合は組合員という人を組織の基本としています。組合では、組合員1人の出資額が原則として総額の4分の1までに制限されていますが、会社にはそのような制限はありません。
総会における議決権・選挙権は、株式会社では株式数に比例したものとなるため、多数の株式を所有する株主の意向による会社運営がなされますが、組合では各組合員の出資額の多少にかかわらず1人1票となっています。
第2に、会社は利潤をあげて株主に利益を配当することを目的とする営利法人ですから配当は無制限に行えますが、組合は相互扶助を目的とする中間法人であり、組合事業による剰余金については、各組合員が組合事業を利用した分量に応じて配当する事業利用分量配当を基本として行うこととなっています。また、出資額に応じて行う配当もできますが、これは年1割までに制限されています。
ここでいう相互扶助とは、中小企業者が組合を結成し、協同し達成すべき目的を掲げ、そのために必要な共同事業を行い、各組合員がこれを利用することによってそれぞれの利益を増進するという関係をいいます。この相互扶助こそ、人的結合体としての組合を貫く根本精神です。
第3に、組合は、組合員自らが組合の共同事業を利用することにより、組合員の事業活動に役立てていくことを目的としていますが、株式会社の場合、株主は当該企業の事業を利用することを目的としてはいません。また、組合の共同事業は、組合員の事業活動を補完することを目的としているほか、組合員に事業の効果を直接及ぼすことを目的として行われます。また、組合の事業活動が特定の組合員のみに片寄って行われることは、相互扶助の観点から原則としてできません。
第4に、株式会社は、資本の論理に基づく経済合理性を中心としますが、組合は経済合理性の追及とともに、人間性を尊重し、不利な立場にある組合員の経済的地位の向上を図るための組織です。株式会社にない制度上の特典が組合に与えられているのはこのためです。